特大貨物を輸送する貨車に大物車 がある。それまで筆者は図鑑でしか見たことがなかった車輌で、1993年に購入した鉄道雑誌に運行情報が掲載されていたのを機に大物車がマイブームとなり、一年余りに渡って撮影したものをここにまとめた次第である。
調べてみると特大貨物を輸送するには45km/hの速度制限があり、深夜帯のダイヤで運行されている。そのため昼間に積車走行の姿を目にすることはまずない。
ただ、その低速ゆえ、目的地へ到着するまでに途中何度も停留し、数日かけて輸送することになる。
詳細に撮影するにはこの留置された状態が好条件となり、当時の留置駅であった富士川駅には幾度となく通うことになった。
形式写真では原則、空車時の姿を記録する決まりとなっているが、当サイトでは積車留置中の車体を中心に、積荷の内容も含めて掲げることにした。
車輌の寸法や経歴などの詳細は他のサイトに委ねるとして、ここでは写真から読み取れる情報を中心に、建築の知識などと絡めて記すことにする。
道路環境の向上や特大貨物用トラック等の技術革新により、大物車の運用は減少傾向にあり、撮影した1993年当時でも往時に比べ運用本数は半減したと書かれていた。
その状況は更に進み、2021年現在、現役の大物車はシキ611、シキ801、シキ850、シキ1000〜1002と数える程になっている。
(シキ1000形は3輌とも2022年3月に廃車)
大物車の貨車記号は「重量品」に由来する「シ」と、25t以上の荷重「キ」を組み合わせた「シキ」を冠している。
また、大物車の特徴のひとつに積荷の仕様により荷受梁が選択される点が挙げられ、AからDまでの記号が振られている。 以下に簡単に説明すると
A:低床式
弓形をした荷受梁を前後の台車が負荷する単純な構造である。積荷は通常はクレーンで積み下ろしするため、架線等の上空制限のない地点で有効なタイプである。
B:吊掛け式
積荷の筐体が車体前後の荷受梁に接続し、積荷の自重により緊結される。積荷の上下左右の寸法は車輌限界まで計画でき、大型の積荷に適した方法といえる。
積車時の全長は積荷の寸法に従い増減する。
C:落し込み式
積荷を荷受梁中央の空間に落し込み支持する方法で、シキ25のような単純なものから、シキ800B2Cのように積荷の左右に水平梁を渡し、前後の吊掛け式梁で支持する構造などがある。
D:分割低床式
低床式のAタイプとの相違は、荷受梁のうち積荷が据えられる低床部が分離でき、低床部ごと荷下ろしできる点が挙げられる。クレーンの使用が制限される電化区間などで有利なタイプである。
記号の省略:
形式によっては荷受梁が一種類だけのものもあり(初期の大物車はこれが標準)、この場合は記号は省略される。(例:シキ160)
数字:
同方式で荷受梁のタイプが複数ある場合は、さらに数字が付加され区別される。(例:シキ800 B2)