飯田線の旧型国電

- 1982年の記録 -

 旧型国電の宝庫であった飯田線。身延線の旧国も1981年の夏に廃止され、もう少し形式写真のコレクションを増やしたい思いで遠征したときの記録である。小学生だった私にとって、同級生との二人旅は神奈川県から豊橋という距離が日帰りできる限界の距離で、お年玉を旅費に充てるも新幹線を利用するまでの金額はなく、各駅停車で4時間近くかかっての到着だったと記憶している。
 また当日は晴天で撮影には好都合と思いきや、いざ現像してみると車輌の足回りが影で黒くつぶれていたことは残念であった。
まあ、小学生のやることである。現場に2時間程度しか滞在できないプランと、撮影したフイルムも1本だけという、今思えば当時の自分を支援したくなるような、何ともお粗末な旅程であった。

2018年8月 記

80系

豊橋駅1・2番線に揃った80系



クハ86

クハ86300

クハ86300

形式 クハ86
自重:32.0t  換算:積 3.5 空 3.0
全検:浜松工 55年3月 定員:76人 所属:静トヨ

座席:クロスシート 数:76席
台車:TR48
製造年:昭和32年 川崎車輌 改造年:-
前形式:-

飯田線では前面が豊橋向きの車輌を奇数車番にするという原則だが、この車輌のように例外もあったようだ。

撮影:1982.01.05. 豊橋駅

クハ86300の客室

クハ86300の客室

デッキより撮影。手前右側に便所がある。



モハ80

モハ80314

モハ80314

形式 モハ80
自重:45.6t  換算:積 5.0 空 4.5
全検:浜松工 55年3月 定員:88人 所属:静トヨ

座席:クロスシート 数:88席
台車:DT20A
製造年:昭和32年 川崎車輌 改造年:-
前形式:-

撮影:1982.01.05. 豊橋駅

形式番号とサボ



クモニ13

クモニ13025

クモニ13025

形式 クモニ13
自重:41.3t  換算:積 5.5 空 4.0
全検:浜松工 55年3月 定員:88人 所属:静ママ

座席:- 数:-
荷重:11t 容積:71.4m3
台車:DT10
製造年:大正13年 改造年:鋼製化(S27 日本車輌 S33 幡生工場 撮影時メモより)
前形式: モハ10176(木製)

撮影:1982.01.05. 豊橋駅

船町駅

船町駅にて

物資輸送の主役が鉄道鉄道であった時代の晩年の風景である。
正月休みが終え、平時より荷物量が増加したのだろうか、クハユニ56だけでは足りずクモニ13が増結されていた。
郵便荷物車が併結された列車は豊橋駅では集荷設備のある1番線に入線していた。



クハユニ56

クハユニ56001

クハユニ56001

形式 クハユニ56
自重:32.4t  換算:積 4.0 空 3.0
郵便室荷重:1t 容積:17.2m3 郵袋数:100袋
荷物室荷重:3t 容積:17.2m3
全検:- 定員:66人 所属:静ママ

座席:セミクロスシート 数:36席
台車:TR23
製造年:昭和11年 田中車輌 改造年:昭和33年 豊川分工場
前形式:クハニ67001

撮影:1982.01.05. 豊橋駅

クハユニ56001

形式番号 クハユニ56001

郵便マークの下には「郵袋 100 荷重 1t 」と記載されている。



クモハ54

クモハ54112

クモハ54112

形式 クモハ54
自重:46.6t  換算:積 5.5 空 4.5
全検:- 定員:120人 所属:静ママ

座席:セミクロスシート 数:64席
台車:DT12
製造年:昭和15年 汽車会社 改造年:昭和30年 吹田工場
前形式:モハ60040

撮影:1982.01.05. 豊橋駅

クモハ54112

形式番号とサボ

クモハ54112の台車

クモハ54112の台車 DT12

台車形式はDT12。吊り掛け式モーターが垣間見える。

軸受にローラーベアリングが採用される以前は平軸受が一般的で、潤滑油を染み込ませた布などが格納されている「軸箱」が外観上の特徴であった。


クモハ54108

クモハ54108

形式 クモハ54
自重:46.6t  換算:積 5.5 空 4.5
全検:- 定員:120人 所属:静ママ

座席:セミクロスシート 数:64席
台車:DT12
製造年:昭和15年 汽車会社 改造年:昭和30年 吹田工場
前形式:モハ60036

撮影:1983.08.07. 中部天竜駅(留置線)

図面上はクモハ54112と同一仕様の車輌であるが、戸袋の窓枠がHゴム化されている。

クモハ54117

クモハ54117

形式 クモハ54
自重:46.6t  換算:積 5.5 空 4.5
全検:- 定員:120人 所属:静ママ

座席:セミクロスシート 数:64席
台車:DT12
製造年:昭和15年 汽車会社 改造年:昭和30年 吹田工場
前形式:モハ60090

撮影:1983.08.07. 中部天竜駅(留置線)

この車輌もクモハ54112と同一仕様であるが、豊橋向きの117は108と比べ前面幌枠が若干太いのが見て取れる。
また、右の尾灯脇にジャンパ栓受があるのも他の車輌との差異であるが、飯田線では前面が豊橋向きの車輌を奇数車番とし、これらにはジャンパ栓受が装備されていたためである。



クモハ53

クモハ53008

クモハ53008

形式 クモハ53
自重:48.0t  換算:積 5.5 空 5.0
全検:浜松工 56年3月 定員:116人 所属:静ママ

座席:セミクロスシート 数:76席
台車:DT12A
製造年:昭和12年 川崎車輌 改造年:昭和27年 吹田工場
前形式:モハ43040

撮影:1982.01.05. 豊橋駅

クモハ53008

クモハ53008 1位側より

クモハ53008の客室

クモハ53008の客室

2ドアの仕様のため、クロスシートが連続する。奥の車輌はクハ47009。
今、改めて見てみると、逆にモダンな雰囲気さえある。

クモハ53008の台車

クモハ53008の台車 DT12A

モーター搭載台車としては、軸受けにローラーベアリングが採用された最初期のもので、その他の構造はDT12を踏襲している。



クモハ52

クモハ52004

クモハ52004

形式 クモハ52
自重:47.9t  換算:積 5.5 空 5.0
全検:浜松工 52年2月 定員:110人 所属:静ママ

座席:セミクロスシート 数:70席
台車:DT12A
製造年:昭和12年 川崎車輌 改造年:昭和28年 吹田工場
前形式:モハ52004

撮影:1991.08.25. 佐久間レールパーク

1978年に飯田線から引退したクモハ52は豊川工場に004が保存され、1991年に佐久間レールパークに展示された。
詳細ページ



クモハ51

クモハ51200

クモハ51200

形式 クモハ51
自重:48.4t  換算:積 5.5 空 4.0
全検:- 定員:120人 所属:静ママ

座席:セミクロスシート 数:62席
台車:DT12
製造年:昭和9年 川崎車輌 改造年:昭和39年 大船工場
前形式:モハ43002

撮影:1982.01.05. 豊橋駅



クハ68

クハ68405

クハ68405

形式 クハ68
自重:33.7t  換算:積 3.5 空 3.0
全検:- 定員:120人 所属:静ママ

座席:セミクロスシート 数:59席
台車:TR23
製造年:(昭和8年 川崎車輌 改造年:昭和25年 吹田工場 昭和30年 豊川工場 昭和34年 大船工場 撮影時メモ)
前形式:クロハ59009 クハ68029 クハ55143 クハ68009

撮影:1982.01.05. 豊橋駅

クハ68405の客室

クハ68405の客室

クハ68405側面

クハ68405側面

不規則な窓配置はこの車輌の度重なる改造の歴史を物語っている。

撮影:1983.08.07. 中部天竜駅(留置線)



クハ47

クハ47069

クハ47069

形式 クハ47
自重:33.7t  換算:積 3.5 空 3.0
全検:- 定員:108人 所属:静ママ

座席:セミクロスシート 数:80席
台車:TR23
製造年:昭和5年 日本車輌 改造年:昭和31年 日本車輌(支店) 
前形式:サハ48015

撮影:1983.08.07. 七久保 - 伊那本郷間

外観はクハ47009と酷似しているが、便所の位置が4位側で、3位の隅の座席はボックス席となっているため009より1席多い。
さよならゲタ電号の一コマから



 

 


1・2番線に並ぶ80系

1・2番線に並ぶ80系

完成されたデザインは古さを感じさせない

80系

豊橋駅を出発する80系

80系デッキと幌

80系デッキと幌


80系のデッキ

80系のデッキと便所

 

旧型国電運転台

運転台

形式不明 

クモユニ56011

入線するクモユニ56011

左には名鉄パノラマカーが写っている

ドアを手であけてください

ドアを手であけてください

旧型国電の日常風景としてドアに貼ってあった「ドアは手であけてください」というラベル。この書体自体に昭和を感じる。
旧型国電の自動ドアは閉まる機能のみで、開ける場合は専ら手動であったが、子供の力でも簡単に開けられるほど軽い作りであった。



豊橋駅 1981年

クハ86 300番台

クハ86 300番台

その前年に行った家族旅行の際に無理やり豊橋駅へ寄ってもらい、父が撮った写真。 私の父は鉄には無関心であったため、乗客の立場であるホーム側からの撮影となってしまうところが笑える。
 

クモニ81

飯田線には3輌が配属されていた。 行き先と発車時刻が表示された看板は駅員が線路に降りて取り付けていたことが判る。

クハ86 300番台

クハ86 300番台

クハ86 300番台とクモニ81

クハ86 300番台とクモニ81




豊橋機関区(静トヨ) 旧型電車配置表 (昭和55年当時)

形式 車番
モハ80 300 302 303 304 307 308 309 310 311 312 313 314 316 325 326 340 341 342 343 345 349 350 365 373 379 384 389 391 392 393
クハ86 300 301 302 304 305 306 307 308 309 311 313 314 315 317 319 329 332 334 338 339 340 342 346 347 348 353 354 356
クハ85 104 108
クモニ81 101 102 103
クモニ13 025 026


伊那松島機関区(静ママ) 旧型電車配置表 (昭和55年当時)

形式 車番
クモハ61 003 004 005
クモハ54 001 002 006 106 108 110 111 112 117 125 129 131 133
クモハ53 000 001 007 008
クモハ51 029 200 
クモハ50 008
クモハ43 015
クハ68 042 400 403 404 405 406 408 409 410 412 414 416 418 420
クハ47 009 069 104
クモハユニ64 000
クハユニ56 001 002 003 004 011 012