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峰発電所取水ダム

 

峰発電所は明治43年3月に富士紡績の電力供給用として建設されました。現存する酒匂川水系の発電所としては最古です(明治40年運用開始の漆田発電所は昭和12年9月をもって廃止)。

その峰発電所へ供給する水の取水口が峰取水ダムになります。
ダムとはいっても高さは3m程度で、堰と言った方がよさそうです。
新河川法では高さ15m以上のものをダムと称していますが、発電用のものは除外されているようです。

酒匂川水系で最古の発電用水路となるため、他と比べその流路は直線的ではなく、山裾を等高線をなぞるように蛇行していきます。途中300mほど下流に排砂口と思われる設備もあります。

 

関連:
峰発電所

 

峰取水ダム全景

左下の竪坑が生土発電所から流入する水路の分岐。
吊り橋の下がダムとなっています。
空気膨張式のラバーダムで、2010年台風9号の被害が水路にあり、撮影時はせき止めておらず、解放状態でした。

水利使用標識

水利使用標識

河川名 二級河川酒匂川水系酒匂川(鮎沢川水系鮎沢川)
許可年月日 許可番号 昭和8年3月1日
 静岡県指令河第1-1号
 神奈川県指令河第14-2号
許可期限     平成37年12月31日
許可権者名    静岡県知事・神奈川県知事
水利使用者名   東京電力株式会社
水利使用の目的  発電
取水量      最大16.50m3/s
貯水量
取水施設管理者名 東京電力松田制御所 土木保守G
所轄事務所名   静岡県沼津土木事務所・
         神奈川県松田土木事務所

竪坑の様子

生土発電所で使用された用水(写真左側)が、ここで取水ダム(写真下側)から補充される構造と思われます。
生土発電所の使用最大水量が20.04m3/sec、一方、下流の峰発電所では16.50m3/secと何故か減少しています。余剰水をどこで河川に戻しているのか、通常運用を待って確認したいと思います。

右岸からの全景

写真左に制水門が3門見て取れます。
吊り橋手前の手すりやフェンスが壊れているのは、台風9号による被害を示しています。
この付近まで増水したようです。

峰発電所 取水口制水門

型式      鋼製スライドゲート
純径間X扉体高  1.520m X 2.000m
揚程      3.000m
門数      3門
電動機容量   3.7kW
開閉速度    0.3m/min
扉体重量    1.15ton
製作年月    昭和62年3月
製作      株式会社田中機械工業所
         静岡県富士市五貫島字靖国793番地

峰発電所取水ダム洪水吐ゲート

高 さ   2.900 m
天 幅   33.600m
敷 幅   30.700m
型 式   空気膨張式
製造年月  昭和62年3月
製 作   住友電気工業株式会社

制水門と洪水吐詳細

洪水吐には萎んだ状態のラバーダム端部が見えています。

平常時の洪水吐ゲート

ゲートは金属に見えますが、空気膨張式のラバーダムです。

通行禁止となっていた吊り橋

台風の被害により橋が歪んでしまっています。立入禁止のロープが橋の前後に施されていました。

右岸側の施設

以前に探索したときに用途不明だった設備です。

雑草類が枯れるのを待って再訪してみました。
台風被害の復旧工事は未施工のようです。

予備水門

水門上部に取り付けられているプレートには予備水門と刻まれていました。そこでこの水路を予備水路と仮称しておきます。

予備水門(上流側から)

右岸側はオーバーフローになっています。

峰発電所 予備水門

型式      鋼製ローラーゲート
純径間X扉体高  3.000m X 3.500m
揚程      3.500m
門数      1門
電動機容量   0.75kW
開閉速度    0.30m/min
扉体重量    2.76ton
製作年月    平成6年3月
製作      株式会社田中機械工業所

予備水路の行き先

予備水路は水門からほどなくしてトンネルにないます。トンネルの先に光が見えるので距離は短いことがわかります。
当初予想していた、サイホン式で左岸側にある峰発電所へ送水する構造ではありませんでした。

予備水路流出部(左岸の県道から撮影)

何十回も車で通行したことのある左岸の県道からの眺めですが、歩いてみて初めて予備水路流出部の存在を知りました。

素掘りの予備水路トンネル

予備水路という呼称は筆者が「予備水門」と関連づけて仮称しているものです。通常洪水吐として機能しているようです。水路の流出部は岩盤が堅牢であるためか、素掘りのトンネルとして使用されています。
通常洪水吐なら何故このような複雑な構造とするのか、疑問が残ります。
取水ダム施工時の迂回路だった可能性もありますが、本当の理由は不明のままです。

工事中の生土発電所付近

現場には近寄ることができなかったため、望遠撮影で推測するに、生土発電所で使用された発電用水路の復旧工事のようです。鮎沢川の駿河小山付近は2010年の台風9号の被害が最も大きかった地区のひとつで、生土発電所と峰取水ダムを結ぶ水路は壊滅的被害だったのかもしれません。



台風9号による鮎沢川の被害

台風9号による被害

野沢川が鮎沢川に合流する地点。
写真の左から中央にかけて、下野沢橋という橋が架かっていましたが、台風9号に伴う増水で流出してしまいました。
またその橋桁がダムのように漂流物をせき止め、被害が拡大したことが考察されます。

富士見橋の橋脚に引っ掛る流木

野沢川の被害