小湊鐵道 五井機関区
小湊鉄道のキハ40
小湊鐵道に令和3(2021)年JR東日本からキハ40形が計5輌譲渡され、それぞれ異なるカラーリングで営業している。
現在JR東日本、JR東海からキハ40系は全廃しているため、東京付近ででその勇姿を見られる数少ない環境となっている。
譲渡された5輌はキハ40系のうち、全て前後に運転台のあるキハ40形で単行運転も可能な車輌である。
小湊鉄道へ移行後の5輌はキハ40 1〜5と改番されたが、外観はほぼ原形を留めた状態で運用されている点はありがたい。
仙コリ(郡山総合車両センター)のキハ40
秋アキ(秋田車両センター)のキハ40
元の車輌はJR東日本の磐越西線や只見線を管轄していた郡山総合車両センターと男鹿線を管轄する秋田車両センターに所属していたキハ40形である。
これらの地域の冬季の気候は厳しく、寒地用のキハ40形500および1500番台が多数所属していた。 しかし、譲渡されたキハ40形は暖地仕様の2000番台が中心で、これらは所属車輌の中では少数派であった。
項目 | 値 | |
---|---|---|
定員 | 座席数 | セミクロスシート 66 |
立席数 | 30 | |
主要寸法 | 最大長(mm) | 21,300 |
最大幅(mm) | 2,930 | |
最大高(mm) | 4,055 | |
台車中心間距離(mm) | 14,400 | |
自重(t) | 36.6 | |
動力機関 | 形式 | DMF15HSA |
連続定格出力(ps)/ 回転数(rpm) | 220/1,600 | |
台数 | 1 | |
最高運転速度(km/h) | 95 | |
台車 | 形式 | DT22D,TR51C |
軸間距離 | 2,100 | |
枕ばね | コイルばね | |
軸ばね | コイルばね | |
車体 | 運転台 | 両側 |
暖房装置 | 温風 | |
便所 | 和式 1 | |
付属装置 | 冷却水容量(ℓ) | 400 |
燃料タンク容量(ℓ) | 800 | |
便所用水タンク容量(ℓ) | 250 x 2 | |
製造 | 初年度 | 1979 |
輛数 | 148 |
では何故、暖地用のキハ40形2000番台が採用されたのかを考察してみたいと思う。
2022年12月 記
キハ40 500番台
仙コリのキハ40形500番台
キハ40形500番台は寒地設計の車輌で、2000番台との大きな相違点は、座席がロングシートで、客室と乗降扉の間にデッキが設けられていること、台車が着雪による性能低下を防止する設計のDT44AおよびTR227Aである点が挙げられる。 その他エンジンや便所の配置などは同一仕様となっている。
寒地用のDT44A台車
写真は五能線で運用されていたキハ48
項目 | 値 | |
---|---|---|
定員 | 座席数 | ロングシート 66 |
立席数 | 30 | |
主要寸法 | 最大長(mm) | 21,300 |
最大幅(mm) | 2,930 | |
最大高(mm) | 4,055 | |
台車中心間距離(mm) | 14,400 | |
自重(t) | 37.3 | |
動力機関 | 形式 | DMF15HSA |
連続定格出力(ps)/ 回転数(rpm) | 220/1,600 | |
台数 | 1 | |
最高運転速度(km/h) | 95 | |
台車 | 形式 | DT44A , TR227A |
軸間距離 | 2,100 | |
枕ばね | コイルばね | |
軸ばね | エリゴばね | |
車体 | 運転台 | 両側 |
暖房装置 | 温風 | |
便所 | 和式 1 | |
付属装置 | 冷却水容量(ℓ) | 400 |
燃料タンク容量(ℓ) | 800 | |
便所用水タンク容量(ℓ) | 250 x 2 | |
製造 | 初年度 | 1977 |
輛数 〜511 512〜 |
12 80 |
小湊鉄道 キハ200
小湊鐵道 キハ201
次にキハ40系導入により余剰となる小湊鐵道キハ200形に関してであるが、 キハ40系導入前は全14輌所属のうち12輌の運用があり、いずれもロングシートで便所設備はない。
この点を考えると、キハ40形2000番台の座席配置や便所の有無が導入された理由にはならないといえる。
今後当分の間は、12輌全てをキハ40系で置き換える訳ではなく、併用されることになるらしく、そうなるとやはりメンテナンス効率がキハ40形2000番台を導入した理由に挙げられそうである。
なお、撮影した日は偶然、五井機関区構内に台車のみの姿で留置されている状態を目にした。
DT22系駆動台車とTR51系付随台車
形状から判断するとDT22系の駆動台車とTR51系の付随台車であると推定できる。
砂箱の設置されている左の台車が駆動台車で、右は付随台車である。 キハ200形の台車には砂箱が見当たらないため、写真の台車はこの日、目にすることのなかったキハ40-4のものである可能性が高い。
DT22系およびTR51系台車はキハ200形とキハ40形2000番台に共通した仕様で、先述の寒地用のDT44Aとは全く異なる形状をしている。 余剰により廃車となるキハ200形から部品を供出することも可能であろう。
共通した作業工程で効率の向上化が計られることから、キハ40形2000番台が選定されたと筆者は考えている。
キハ40 1
キハ40 1 小湊鐵道色 -2位側から-
キハ40-1は小湊鐵道色にカラーリングされた車輌で、前形式はキハ40-2021であった。郡山総合車両センターに配属され、磐越西線や只見線で活躍していた。側面中央に行き先表示幕が設置された個体でJR時代からのものである。
小湊鐵道のロゴ「KTK」は1位と2位の乗降扉と客室窓の間にレイアウトされている。
キハ40系に共通した外観上の特徴として、2位-4位側の側面中央のやや前位寄りに大型のルーバーが配置されているが、これはディーゼルエンジンで燃料との混合気を生成するための空気取入れ口である。
他方、両側面の中央やや後方には小型のルーバーが見て取れるが、こちらは熱交換器の冷却用に使用される空気吸入口である。その隣にあるキャップは給水口である。燃料である軽油の給油口だと思われがちだが、実際は冷却水用のもので両側面に1箇所ずつある。
キハ40 1 -4位側から-
撮影 2022年11月22日 五井機関区
キハ40 2
キハ40 2 東北地域本社色 -2位側から-
撮影 2022年11月22日 五井機関区
キハ40-2は前形式はキハ40-2026でJR東日本郡山総合車両センターに配属されていた車輌である。
塗装は東北本社色と呼ばれる只見線や磐越西線で活躍したキハ40系のものがそのまま踏襲された。
下の写真は前形式時の同車輌。JRのロゴの同位置にKTKが上書きされたことが伺える。 外観上の変化としては、屋根端部の衛星無線アンテナの筐体は上部カバーが撤去され、防護無線アンテナも小湊鐵道の仕様に更新された。これらを保護するツララ切りは存置された。
キハ40 2026
撮影 2018年9月7日 会津若松駅付近
DT22D駆動台車
キハ40系は1輌あたりにエンジンを1台搭載しており、前位側台車のエンジン寄り(車体中央寄り)の車輪のみが駆動輪である。
写真では砂箱と砂巻き管が設置されていることからも識別できる。
この表情をした台車は、電車、気動車、客車というカテゴリーを越えて存在し、101系電車の登場した1957年から20年以上に渡り採用されてきた構造の台車で、重量感のある形状は昭和の鉄道を語るには不可欠なアイテムだといえる。
キハ40 3
キハ40 3 首都圏色 -4位側から-
キハ40-3は秋田総合車両センター(秋アキ)に所属していた車輌で、五能線で首都圏色(タラコ色)として活躍していた。 着目すべきは乗降扉の窓にタブレット保護柵が存置している点が挙げられ、より原型に近い姿を保っている。
側面に電動の方向幕はなく、手差しのサボ受けが残っており、小湊鉄道ではこれらを活用している点が嬉しい。
車輌換算表記と検査周期表記
検査周期には(平成)29(年)10(月)
「秋田総合車(輌)セ(ンター)」と表記されていた。
キハ40 3 -2位側から-
撮影 2022年11月22日 五井機関区
キハ40 4 男鹿線色
未収録 撮影時は全般検査中か?
キハ40 5
キハ40 5 首都圏色 -2位側から-
キハ40-5は秋田総合車両センター(秋アキ)に所属し、男鹿線で男鹿線色として活躍していた車輌である。
前形式はキハ40-1006。小湊鐵道のキハ40系の中で唯一1000番台から移行したタイプでもある。
キハ40形1000番台はJR烏山線用に全9輌が2000番台から改造された形式で、4位側に設置されていた便所を撤去し側面の採光窓は廃止され塞がれた。便所の撤去により空いた床面に座席は追加されていない。
屋根上の便所用水タンクは撤去されず原形を保っている。よって2000番台との外観上の差異は便所採光窓の有無ということになる。
小湊鐵道では汚物処理施設がないためキハ200形には元々便所設備はなく、導入された便所を有するキハ40形も封印され使用不可となっている。
その点を考慮すると、導入すべき形式はキハ40-1000番台が最適解であったと言えるが、時すでに遅しで、烏山線のキハ40-1000番台は2017年3月で運用を終了し廃車となってしまった。
1006号機はそれ以前にたまたま秋田車輌総合センターへ移籍していた車輌で、偶然と条件が重なり延命できた車輌である。
キハ40 5 -4位側から-
撮影 2022年11月22日 五井機関区
キハ40 5 車輌換算表記と検査周期表記
検査周期:平成29年6月 秋田総合車輌センター
キハ40 5 + キハ40 3