
6輌編成の117系
撮影 1982年12月28日 名古屋駅
117系電車は昭和55(1980)年に営業運転を開始した近郊形直流電車である。
誕生までの経緯
京都、大阪、神戸といった東西150kmにおよぶ大都市圏を結ぶ路線は、国鉄の東海道本線と並行して私鉄の阪急、阪神、京阪などの競合路線が存在している。
これは戦前からすでに始まっており、サービス向上のため、より速く快適な車輌が生み出される土壌があった。流電の愛称を持つ52系はその先駆けであった。
1960年代に入ると私鉄からは新型車輌が相次いで導入される一方、国鉄は113系で凌ぐといった状況が続いていた。
昭和45(1970)年の大阪万博の大量輸送に捻出された113系臨時列車を閉幕後の10月に京都、西明石間で快速として運用が開始された。途中の停車駅は大阪、三ノ宮の2駅のみであったが、運転間隔の開いたダイヤであったため不評に終わっている。
昭和47(1972)年3月に岡山まで新幹線が開業すると、並行在来線の急行列車の多くが廃止されることになる。この余剰となった153系、108輌の車輌を白地にスカイブルーの帯に再塗装し、15分ヘッドのダイヤで登場したのが「ブルーライナー」の愛称で呼ばれる快速列車であった。
昭和49(1974)年に湖西線が開業したことで、同路線まで延長運転されるなど好評を得ていたブルーライナーであったが、競合する私鉄からは京阪3000系や阪急6300系などの新鋭車輌が投入され、昭和50年台に入ると国鉄の相次ぐ運賃値上げに反し、誕生から20年以上となる153系の陳腐化は否めない状況になる。
このような背景により新型車輌投入の気運が高まり誕生したのが近郊形直流電車117系シティライナーである。
2023年6月 記

京阪神地区の時刻表 1985年

113系と並ぶクハ117
東海道本線中京地区の快速はそれまで153系で運用していたものを昭和57(1982)年から117系に置き換えをし「東海ライナー」が誕生した。
この増備車からクハ117にも便所が取り付けられ、乗降扉の半自動化は廃止された。

東海ライナーのヘッドマーク
図案化されたものの東海ライナーの表記はなく、単に快速と表示されていた。
今回のページ編集により判明したのであるが、筆者が収めた117系は中京地区のもので、いわゆる正統派の「新快速」は撮れていなかった。そんな差異も理解していないまま数十年が過ぎていたことになる。

クハ116
117系の偶数車で大阪向きの先頭車である。
クリーム2号とぶどう色2号の組み合わせは戦前に於いてより格上のモハ52をはじめとする流電グループを彷彿とさせる。
側帯の幅は前照灯周りより若干細くデザインされているのが解る。

東海道本線名古屋地区の時刻表
1時間毎に快速が運行していた。
JR東海カラー

JR東海カラーの117系(4輌編成)
撮影 1991年08月24日 飯田線 出馬 - 上市場 間
JRの発足から3年を経た当時、JR東海所属の117系は白地にオレンジ色のラインの塗装に更新されていた。
写真は飯田線の中部天竜駅に開設された佐久間レールパークへの乗客を輸送するための臨時列車「森林浴と佐久間レールパーク号」。

115系と交換する117系「森林浴と佐久間レールパーク号」
撮影 1991年08月25日 飯田線 中部天竜駅

最後尾はクハ117-100番台

EF58プッシュ・プルと113系、「快速」117系

クハ117-25 他
ヘッドマークも国鉄時代の東海ライナーと異なるシンプルなものとなり、 塗色はクリーム色にオレンジ色のラインが3本入っていた。
クハ117の中京地区向けの車輌は便所が設置されていた。
空調は115系までは通風器による自然換気であったのに対し、117系では2機の強制換気装置が装備され、屋根上の冷房装置の前後に配置されていた。
撮影 1992年10月01日 浜松駅
JR東海カラー(二代目)

伊吹山と
20年のブランクを経て117系を撮影。
撮影時には1992年とのカラーリングの差異に気づいていなかった。

同列車を
JR東海カラーの二代目は、オレンジ色のラインが1本に単純化された。
先頭車は一段下降窓、ボルスタレス台車の100番台。
撮影 2012年03月17日 東海道本線 柏原 - 近江長岡 間
JR西日本 黄色単色

117系 末期色
製造から40年を経て、いわゆる末期色(真っ黄色)に塗装された117系である。これだけの年月が経っているにもかかわらず、ほぼ原型をとどめていることは奇跡と言えよう。
撮影 2021年09月19日 岡山駅

同列車大阪寄り
形式写真

クハ117-15
117系の奇数向き制御車である。0番台は全30輌が製造されたが22以降は便所が設置された。
項目 | 値 | |
---|---|---|
定員 | 座席数 [22〜] | 転換クロスシート 60 [58] |
立席数 | 8 [8] | |
主要寸法 | 最大長(mm) | 20,280 |
最大幅(mm) | 2,946 | |
最大高(mm) | 4,066 | |
台車中心間距離(mm) | 14,000 | |
自重(t) | 35.9 [36.3] | |
主電動機 | 形式 x 個数 | - |
出力(kW) | - | |
定格電圧(V) | - | |
定格電流(A) | - | |
最高運転速度(km/h) | 100 | |
台車 | 形式 | TR69K |
軸間距離 | 2,100 | |
車体 | 運転台 | 全室 非貫通 高床 |
冷房装置 | AU75B | |
便所 | - [和式 x 1] | |
製造 | 初年度 | 1979 [1981] |
輛数 | 21 [9] |

モハ117-30
117系の中間電動車。パンタグラフ、主制御器、主抵抗器等を装備している。
項目 | 値 | |
---|---|---|
定員 | 座席数 [ ] 22〜 | 転換クロスシート 64 |
立席数 | 8 | |
主要寸法 | 最大長(mm) | 20,000 |
最大幅(mm) | 2,946 | |
最大高(mm) | 4,066 | |
台車中心間距離(mm) | 14,000 | |
自重(t) | 43.7 | |
主電動機 | 形式 x 個数 | MT54D x 4 |
出力(kW) | 120 | |
定格電圧(V) | 375 | |
定格電流(A) | 360 | |
最高運転速度(km/h) | 100 | |
台車 | 形式 | DT32H |
軸間距離 | 2,100 | |
車体 | 運転台 | - |
冷房装置 | AU75B | |
便所 | - | |
製造 | 初年度 | 1980 |
輛数 | 60 |

モハ116-30
117系の中間電動車。モハ117とユニットを組み、MGやコンプレッサーを装備している。
項目 | 値 | |
---|---|---|
定員 | 座席数 | 転換クロスシート 58 |
立席数 | 8 | |
主要寸法 | 最大長(mm) | 20,000 |
最大幅(mm) | 2,946 | |
最大高(mm) | 4,066 | |
台車中心間距離(mm) | 14,000 | |
自重(t) | 43.0 | |
主電動機 | 形式 x 個数 | MT54D x 4 |
出力(kW) | 120 | |
定格電圧(V) | 375 | |
定格電流(A) | 360 | |
最高運転速度(km/h) | 100 | |
台車 | 形式 | DT32H |
軸間距離 | 2,100 | |
車体 | 運転台 | - |
冷房装置 | AU75C | |
便所 | - | |
製造 | 初年度 | 1979 |
輛数 | 60 |

クハ116−15
117系の偶数向制御車。全車に便所が設置されている。
項目 | 値 | |
---|---|---|
定員 | 座席数 [ ] | 転換クロスシート 58 |
立席数 | 8 | |
主要寸法 | 最大長(mm) | 20,280 |
最大幅(mm) | 2,946 | |
最大高(mm) | 4,066 | |
台車中心間距離(mm) | 14,000 | |
自重(t) | 36.8 | |
主電動機 | 形式 x 個数 | - |
出力(kW) | - | |
定格電圧(V) | - | |
定格電流(A) | - | |
最高運転速度(km/h) | 100 | |
台車 | 形式 | TR69K |
軸間距離 | 2,100 | |
車体 | 運転台 | 全室 非貫通 高床 |
冷房装置 | AU75B | |
便所 | 和式 x 1 | |
製造 | 初年度 | 1979 |
輛数 | 30 |
WEST EXPRESS 銀河

夜明けの伯備線を行くWEST EXPRESS 銀河
2020年に誕生したWEST EXPRESS 銀河。 117系7000番台で、車番は種車の番号に7000を付加したものを使用しているため、1編成のみであるが飛び番となっている。
撮影 2022年11月02日 黒坂 - 根雨 間
形式写真

1号車 クロ116-7016
グリーン車指定席「ファーストシート」
【定員】
昼行運転時:16名
夜行運転時:8名(8ボックス)

2号車 モハ116-7036
リクライニングシート(女性席)
【定員】 14名
+
普通車指定席(ノビノビ座席・女性席)「クシェット(女性席)」
【定員】 12名

3号車 モハ117-7036
フリースペース「明星」
+
普通車指定席 リクライニングシート
【定員】 20名
+
普通車指定席(コンパートメント)「ファミリーキャビン」
【定員】 1室:3~4名

4号車 モハ116-7032
フリースペース 「遊星」

5号車 モハ117-7032
普通車指定席(ノビノビ座席)「クシェット」
【定員】 18名

6号車 クロ117-7016
グリーン個室「プレミアルーム」
【定員】
昼行運転時 複数名用個室:1室2~3名 1名用個室:1名
夜行運転時 複数名用個室:1室2名 1名用個室:1名
+
フリースペース「彗星」